2章の補足で言いたかったこと(確率変数、分布での変数変換について)
本の紹介
- 作者: 井手剛,杉山将
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/08/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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の2章の補足のときに言いたかったことをつらつらと。
設定
を適当な集合として、与えられているものとする。 また、をそれぞれ上の確率分布全体の集合とする。確率分布の定義は
bocchi-talks-information.hatenablog.com
に書いたとおり。
条件付確率または、通信路
写像(のでの値)をで条件付けられた上の条件付分布と呼ぶ。 あるいは、写像をからへの通信路*1と呼ぶ。
同時分布と周辺分布
通信路を用いて、以下の同時分布や周辺分布が定義できる。
上の確率分布と通信路が与えられているとき、上の同時分布 は で定義される。
また、同時分布が与えられたとき、 や を同時分布 から得られた周辺分布と呼び、この同時分布から周辺分布を得る操作を周辺化と呼ぶ。
Markov morphism
通信路が一つ与えられると、写像が次のように定義できる。
この写像はMarkov morphismと呼ばれ、を上の数として、としたときに、
と凸結合に対して閉じているという性質を持っている*2。
また、Markov morphismはからへの確率変数、分布の意味での変数変換となっている。
写像と通信路
ここでは、写像は通信路の特殊例だと言うことを説明する。
まず、一点分布と言う特殊な分布を考える。一点分布とは、ある一点に確率が集中していて、他のところの確率が0になるような確率分布のこと。 イメージとしては、1しかでないサイコロや表しかでないコイントスの持つ確率分布と思ってもらうといい。
さて、集合上の一点分布全体のなす集合を考える。 まず、明らかに。 次に、一点分布はある一点を選んでそこに確率を集中させるので、集合と集合には自明な全単射(1対1対応)がある。 具体的には、
というもの*3。
ここで、写像を考える。集合と集合には自明な全単射(1対1対応)があったから、写像と写像にも自明な全単射(1対1対応)がある。 また、なのだから、写像は通信路なのが分かる。
2章の補足は何だったのか?
一言で言ってしまえば、
「写像に対応する通信路に関するMarkov morphismを用いた変数変換。」
当然、今まで説明してきたように通信路があれば、その通信路が写像に対応していなくても、通信路に関するMarkov morphismを用いた変数変換ができるので、 あの話はもう少し広いクラスに拡張することができる。